ビットコイン(暗号通貨)の所得税法上の取扱い

2017.11.08

今年9月に国税庁ウェブサイトのタックスアンサーで所得税法上の取扱いが突然発表された暗号通貨。
ただ、このタックスアンサーでも詳細な取扱いについては一切触れられておりません。
そのため、暗号通貨を巡っては、税理士だけではなく、税務署もまだ混乱しており、利用者はさらに混乱するという状況ですので、弊社が考える現時点での所得税の各種の取扱いをまとめてみました。


<取得した場合の取扱い>

暗号通貨を取得したタイミングでは、何も課税は発生しません。

ただし、売却時等、所得税が課されるタイミングで、所得税の計算上、取得価額が必要になりますので、取得価額が分かるようにしておくことが必要です。


■取得価額の計算方法

日本円による取得の場合:取得価額=支払った日本円額

外貨による取得の場合:取得価額=支払った外貨額×取得日のTTS

他の暗号通貨による取得(例:ビットコイン→イーサリアム):
取得価額(イーサリアム)=支払った暗号通貨(ビットコイン)額×取得日の日本円レート(BTC/JPY)

(※後述のとおり、この時点でビットコインの売却損益は認識されます。)



<保有したまま年末を迎えた場合の取扱い>

所得税は暦年課税であるため、各年の年末までの利益に対して課税されますが、原則として含み益には課税されないため、暗号通貨を保有したまま年末を迎えても、特に課税は発生しません。

ただし、後述するように暗号通貨の売却損益は雑所得に分類されることとなっています。

雑所得では利益は課税されるのに対して、損失は雑所得内でしか通算することができません。

ですので、暗号通貨の利益が発生した年において、含み損のある暗号通貨を保有している場合には、一度損失を確定させて利益と相殺するのも、翌年以後に良いタックスポジションを取る1つの方法です。



<売却した場合の取扱い>

暗号通貨を使用した場合、雑所得として課税されており、売却した場合も同様の取扱いとされています。

雑所得は株の譲渡所得等の分離課税とは違い、給与所得や事業所得等と合算され、最大で55.945%(復興特別所得税、住民税含む)の税率が課されます。


日本円による売却の場合:雑所得=受け取った日本円額−取得価額

外貨による売却の場合:雑所得=受け取った外貨額×売却日のTTB−取得価額



<他の暗号通貨に交換した場合の取扱い>

暗号通貨を他の暗号通貨に交換した場合も、売却したものと同様、交換時点で一度損益が確定したものとして課税されます。

雑所得=売却した暗号通貨×売却日の日本円レート−取得価額



<暗号通貨でモノの購入や経費の支払いをした場合の取扱い>

暗号通貨でモノの購入や経費の支払いをした場合も、売却したものと同様、支払い時点で一度損益が確定したものとして課税されます。

雑所得=モノの購入額もしくは費用の支払額(日本円)−取得価額

※日本居住者は全世界の所得に対して課税されますので、売却、交換、モノの購入や経費の支払いを海外で行った場合でも日本で課税されます。



<複数の取得がある場合の取得価額の計算>

複数の取得がある場合に売却時の取得価額の計算をどう行うかという規定は暗号通貨に関しては法令、通達、タックスアンサー等どこにも規定がありません。

所得税では有価証券の譲渡に関しては、譲渡所得に該当する場合及び雑所得に該当する場合には「総平均法に準ずる方法」を採用することとされていることから、それに準じて「総平均法に準ずる方法」で評価することが適当なのではないかと考えまれます。(注1)


なお、ここでいう総平均法に準ずる方法とは、基本的には移動平均法と同一の計算方法であり、総平均法とは異なります。



<公開前のプレセールで取得した場合>

公開前のプレセールで取得した場合、プレセール時の公募価額が取得価額となります。



<プレセールで取得した暗号通貨に値が付かなくなった場合または取引停止になった場合>

この場合であっても、コイン自体は存在するので、譲渡もしくは使用により含み損を実現させない限り、損失の認識はできません。

なお、暗号通貨の譲渡もしくは利用による損失は雑所得のマイナスであることから、雑所得のプラスとしか相殺することができません。



<暗号通貨が分裂した場合>

暗号通貨が分裂した場合の取扱いは、既存の法令等が想定していない事象であり、類似の規定から類推する必要があります。

暗号通貨の分裂については、その分裂が納税者の意図するものでもなく、分裂した瞬間の価値が明確でもないことから、分裂時には課税されないものと考えられます。


ただし、分裂した暗号通貨の取得価額を考える際にゼロと捉えるか、元の暗号通貨との間で取得価額の割り振りをするべきと捉えるかは、現時点ではどちらとも言えませんので、ケースバイケースで判断する必要があります。



<マイニングによる利益を得た場合>

マイニングによる利益については、事業所得もしくは雑所得となります。

ある程度以上の設備投資をして、ビジネスとして(事業的規模で)マイニングを行なっている場合は事業所得となり、趣味としてやっているレベルであれば雑所得となります。

事業所得と雑所得の違いは、他のビジネスと同様、それが事業的規模であるかどうかを総合的に判断して決定されます。


収入金額=マイニングにより得た暗号通貨×当日の日本円レート


なお、マイニングをするための経費(設備の減価償却費、消耗品費、通信費等)については、事業所得または雑所得の計算上、必要経費としてマイナスすることができます。



上記は取扱いの基本的な部分になり、実際の申告にあたっては、細かい検討が必要となります。


暗号通貨の税務上の取扱いは法令で明確になっていないため、他の法令から類推する等、高度な専門知識が必要です。


STC国際税務会計事務所では、暗号通貨のトレーダーや、取引所運営業者等をクライアントに持つことから、この分野に関して豊富な経験を有していますので、暗号通貨の税務でお困りの方は、ぜひご相談ください。



(注1)有価証券の譲渡が事業所得に該当する場合には、総平均法が原則であることから、暗号通貨の損益についても事業所得に該当する場合には、総平均法が適当だと考えられます。




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